愛媛の大学に合格し、当初、何度かあった地元との行き来には、飛行機やフェリーを使ったが、何故かこの時は鉄道だった。
岡山駅で宇野行の鈍行に乗りかえ、宇野港から、宇高国道フェリーで高松に向かう。
フェリーにかかる時間はそれほどでもなかったように思う。フェリー内には珍しくうどん屋があった。食べたかもしれないし、食べなかったかもしれない。
高松港に着くと、今度は予讃線で松山に向かうため、港から高松駅まで、両者は接しているものの、早足で歩かなければならない。自由席で座りたいのだ。
おそらくこれが、初めて一人で四国に渡った時だったと思う。
四国で一人で生きていくんだ、という覚悟をしながらも、心細さは払いきれない。
そんな時、港から駅に向かう通路だったと思うが、柱に貼られたポスターが目に入った。
人に押されながら、早足で歩く自分の前にそれはあり、釘付けになった。
ポスターには大きな文字で『青い国・四国』とあった。
バックの画像は何だったか、はっきり覚えていない。
足摺岬かどこかの海か。山とか、お寺や弘法大師ではなかったと思う。
刹那、なぜかホッとした。
そうか、四国という括りで捉える視点があるんだ。
そして、四国を称賛するような青い国という表現。
私が生まれ育った地元には全くなかった風土の香り。
ひっそりとだが、誰かから、関心を持たれているような土地。
縁あって、いいとこに来たのかもしれない。
ここで、一人で生きていくんだの覚悟を胸に、18歳の男子は予讃線に乗り込んだ。