(2022/4/8-9)
娘夫婦の引っ越しの手伝いに、相方が招集されたため、一人残された私は週末何をしようかと。
いや、相方について行っても、問題は無いが、何の役にも立たないし。
今後、いざというときのため、天ぷらとか、賄いができるようなじいじになるべく、スキルアップしておきたい意欲は無くはない。
話がそれた。
公認のせっかくの機会なので、できれば宿泊付きのロングライドに行きたい。
しかし、ほとんど実走できていない状態なので、きつい坂は避けたい。
距離はあるけど、獲得標高が低くて、交通量の少ない道路??
これまでの、限られた私の経験から絞り出されたコースは、
高知市→四ツ足峠トンネル→徳島市、の国道195号しかあるまい。
約200キロを二日間かけて。
10年前と4年前に走っていて、大体のしんどさは体が覚えている。
峠は県境の四ツ足峠トンネルの前後だけ。
行き帰りの高速バス、高知市と那珂川沿いの宿の手配などで大忙し。
ちょうど県民割がどうのこうので、他県からの旅行者は時期的に微妙だったが、該当すれば儲けものの気持ちで予約する。
金曜日の午後、仕事を早めに切り上げて、松山駅へ。
輪行の支度を済ませ、500mlの缶ビール一本をリュックのサイドポケットにネジ込み、バスに乗り込む。
待ち受けるだろうトラブルや楽しみに胸を膨らませながら。
到着した高知駅でバイクを組み立て、4つ星ホテルを運河越しに見ながら、2つ星ホテルに到着。
ホテルの2階に料亭居酒屋のような店が入っていて、仙頭酒造の土佐しらぎくを置いている。カツオの刺し身、つぶ貝だったかチャンバラ貝だったかの煮物、天ぷら、タコの唐揚げなど、どれもとびきりうまいのだが、値段も結構だった。
朝食はワッフルを焼いてくれていたので、カロリー補給のため、3個いただく。
ボトルに粉アメ250グラムとパラチノース50グラムを投入し、出発。快晴、追い風。
土佐電の走る道路は狭くなり怖いので、高知駅の裏まで北上し、国道195号線に入る。
車も少なく道路は申し分ないのだが、ほぼ全ての交差点毎に信号止めをくらう。
土佐山田までの道程はもう少し入念な下調べが要りそうだ。
ここからアンパンマンミュージアムあたりまでは道が狭く、交通量が多いので、国道を避け、右岸の県道218号を走行する。
物部川を右手に見、やっとサイクリングに来た喜びを感じながら走る。
アンパンマンで一服しようと、橋を渡って行くも閑散としている。
出店か何かでコーヒーでもと思っていたが、トイレ休憩のみ。
休憩中の同い年くらいの地元のサイクリストと言葉をかわす。
妻からは危ないのでやめて欲しいといわれていること、今乗っているのは電動で坂道は楽だが、意外と平地がしんどいこと、商売をしているので泊りがけでは行けないこと、今日は今から大栃まで行って帰ることなどなど。
さて、再出発。
また橋をわたり、右岸の県道へ。
日向はかなり暑いが、木漏れ日の差す日陰は少しひんやりして最高の気分。
来て良かった。
若干の上り下りも全く苦にならない。
道沿いに2箇所ほど滝の案内が出ていたが、いずれも数キロあるようで、流石にそこまでは余裕がなかった。またいつの日にか。
しばらく行くと、吉井勇記念館というのがあったが、すいません全く存じ上げないものでと素通りしてしまう。
後で調べてみると、明治時代の文学者で、失意の中、四国山地のこの地に隠棲していたらしい。なぜこの地を選んだのだろう。今度行く機会があれば、寄らせていただきます。
程なく、永瀬ダムが現れ、大栃の集落に到着する。
きっと巨木があるのだろうと思いながら、素通り。
後で調べてみると、ムクの大木があるらしい。これも今度また。
ダム湖に面して、物産館があり、ちょうどお昼前になっていたので、食事を摂ることに。
頭の中ではカレーと決めていたのだが、注文を取りに来た方が、今日のランチはエビチリの卵あえですとおっしゃるので、じゃあそれをとたのむ。全く信念がない。
ゴロゴロと大きなエビが数え切れないほど入っていて、味噌汁、香の物までついて、800円は申し訳ないと思うほどだった。
確か、昨夜の何とか貝は数切れで900円くらいだったはず。(まだ恨んでいる。おいしかったから、いいじゃないですか)
ダム横の急坂を超えると、仙頭大橋が見えてくる。
物部川がまだ峡谷である上流域での圧巻の橋である。
写真を撮っていると、グループのサイクリストが降りてきて、挨拶を交わす。
女性の声が多いようだったが、写真を撮っていたので確認できず。
彼らは仙頭大橋には目もくれず、一気に走り過ぎていく。
地元の方で、見慣れているコースなのかもな。
この辺りから、四つ足峠トンネルまで何キロという標識が出だして、いよいよ目的の地に近づいた感が漂ってくる。
別府峡までは川沿を進むので、斜度は大したことはなく、淡々と進む。
別府峡には用はないので、トイレ休憩だけさせて頂こうと館内に入ったら、しっかり係の方にチェックされたので、自販機でコーラ買って、半分飲み。
ここからトンネルまでが、やっと坂らしい坂になる、といっても3キロくらいのものだが。
唯一の登坂だ。
場所によってはギアが足りなくなる。久しぶりとは言え、情けない。
まだかなーと思う頃、トンネルに到着。
無事来れたことに感謝し、写真撮影。
管理者はトンネル入口の清掃まで手が回らなくなったのか、肝心の四つ足あたりが解読不能になっている。
涼しいトンネルをあっという間にすぎ、徳島県側の激坂を降れば、那珂川沿いの道に取って代わる。
比較的上流でも川幅が広く、のどかな風景が連続する。
木頭の集落よりだいぶ手前に、未来コンビニと言う、できたばかりのガラス張りの綺麗なお店に立ち寄る。
そう言えばテレビで見た覚えがある。
物を売るだけでなく、集落を盛り上げていこうと作られたらしい。
ゆずの産地らしく、ゆずの炭酸割りを店外のベンチでいただく。
タバコを吸っていた2輪乗りのイカついおっちゃんが、今日は暑いですねと、優しく話しかけてきた。
2輪の方が自転車の人間をどう見ているかは計りかねるが、何か話しかけたくなる雰囲気を、わたしが醸し出していたのだろうか。
深くは考えず、再出発。
この辺りから、少しずつ計画が狂い始める。
時刻はすでに3時過ぎ。
降るだけなので、そう時間はかかるまいと、たかを括っていたのだが、いつの間にか、宿予約の3時半が近づいてくる。
これまでの2回は、紅葉川温泉より下流の和食温泉に泊まっていたので、かなりの距離を覚悟していたのだが、和食温泉が温泉施設をやめてしまったこともあり、紅葉川温泉より手前の新しくできた宿に予約していたので、全く距離の心配はしていなかったのだ。
だんだん心配になってきて、とりあえず宿に遅れる旨を連絡しようとしたが、電話がつながらない。
スマホで距離を調べると40キロと出る。5キロの8倍か。
ガーミンで5キロ毎の時間が示されるのだが、速くて12分、へばれば15分くらいできているので、下手したら2時間かかるではないか。
まずい。とにかくできる限りスピードを保って走り続ける。
川沿いの道なので降るはずなのに、所々登りもあったりするし、この頃になると峠の上りで調子にのり過ぎたせいか、右膝の腸脛に違和感が出始める。
焦る気持ちでペダルを踏み続けるなか、今度こそと電話をすると、やっとつながった。
地名を伝えると、「そこからなら、3、40分あればたどりつけますよ、1時間はかからんのじゃないかな」とご主人の声に一安心。
なんとか水を一口飲める冷静さを取り戻し、走り出す。
結局この電話から、1時間くらいかけてやっと今夜のお宿に到着。
民家を改造した宿で、色々戸惑うことが多かったが、とにかく雨風しのげ、風呂に浸かれ、アマゴの塩焼き付きのご馳走をいただき、ビール、お酒、焼酎もいただき、食後は仲居さんと川談義で盛り上がり、あったかい布団にくるまって寝ることができ、これ以上何を望むことがあろうか、いやない。
宿の女将さんが、気を利かせてくれ、もしかして県民割が使えるかもと書類を準備しれくださり、クーポンまでいただき、大喜びで翌朝、宿を後にした。(右膝の腸脛問題を抱えながら)